芭蕉布は沖縄の特産物で、イトバショウの葉鞘の繊維を用いて織られた布地のことです。沖縄県や奄美群島の特産品で薄く張りのある感触があるという特徴があります。この布は夏用の着物や蚊帳、座布団、ペンケースなど様々なものとして利用されています。
この生地はすべてを地元の自然の材料を用いて行われ、根気強く繊細な手作業を経て作成されます。糸を作ることから始まり、織っていくというプロセスによって完成する芭蕉布の手仕事は国の重要無形文化財ともなっています。沖縄が誇るこの工芸品は長い行程を丁寧な作業で行われ、やわらかく芯の強い風合いが魅力です。
この布は500年くらいの歴史があるといわれ、琉球王国で王宮の管理する大規模な芭蕉園で芭蕉が生産されていたといわれています。一般家庭ではアタイと呼ばれる家庭菜園で育てた芭蕉で、各家庭ごとに布糸を生産していました。現在では、大宜味村喜如嘉が芭蕉布の里として知られています。
布の原料となる糸芭蕉は、地元では苧(うー)と呼ばれ、一反の芭蕉布を織るために必要な芭蕉は200本といわれています。上質の苧を採り出すところから布作りの作業は始まります。糸作りはイトバショウの葉鞘を裂いて外皮を取り除き、繊維の質ごとに原皮を分けていきます。より内側の柔らかな繊維を用いる布ほど高級であるといわれています。
葉鞘の外皮を取り除いたら、中皮を竹片にはさみしごいて繊維をとります。糸芭蕉の皮は1枚ずつ剥いでいき、4種類にわける皮を剥ぐ苧剥ぎ(うーはぎ)を行います。そして、束ねた苧を大鍋に入れ、灰汁(あく)で煮ていくという苧炊き(うーたき)を行います。その後、水で洗い、灰汁を落として皮から繊維を取り出すという苧引き(うーび)を行います。取り出した繊維を乾かした後に苧を毬状に丸め、その糸を繋ぐという苧績み(うーうみ)という作業があります。細かな作業が連続していますが、これが前半部分の作業です。
その後、糸の染色を行い、いくつもの行程を経てから織るという作業になります。織り上がった反物を灰汁で煮立てます。灰で精練作業が行われますが、芭蕉の糸は白くはならず薄茶色です。その後、仕上げを行って、反物の両端を引く布引きによって規定サイズに揃えていくといった工程があります。この布織では一つひとつのプロセスを丁寧に根気強く行う必要があり、そのような工程を経てやっと布が完成します。繊細でやわらかい風合いとしっかりとした芯の強さの両方をもつ芭蕉布はそのような工程によって生み出されるのです。
現在でも昔の織り方と変わらない手作業の中で誕生するこの布は、芯部のほうが上質で、あらくて張りがあるという特徴があります。涼感があるため、暑い沖縄の気候にもよく合います。平織で縞や絣などがあり、やさしい風合いの中にもしっかりした芯の強さをもつという特徴があるこの沖縄の布は沖縄を訪れる観光客にも人気があります。すべて地元にある自然の素材を用いて一つひとつ丁寧な手仕事によって生み出される芭蕉布は着物や帯だけでなく、テーブルクロスやクッションカバーなどの様々な商品に加工されています。
この布は博物館の中に飾られている工芸品ではなく、今の生活に馴染みやすいような製品を作りたいという人々の想いによって、使いやすいバッグやネクタイなどの衣類、ポーチなども誕生しています。色や柄、その質感に応じ、着物や帯以外のグッズとしても様々な商品が作られています。
材料はすべて地元の自然のもので、時代が変わっても昔から変わらない手仕事でこの布は作られます。細かい工程を丁寧に根気強く重ねながら作成されるこの布は沖縄を代表するすばらしい伝統工芸品です。