近江上布は、近畿地方に所在する滋賀県で製作されている地域の伝統的工芸品です。愛知郡愛荘町や彦根市、東近江市でつくられています。滋賀県は良質な麻の産地として知られている場所です。また、近くを流れる愛知川は高い湿度と豊かな水に恵まれており、上布を生産するのにぴったりの土地になっています。
近江上布は、麻糸でつくった織物である麻織物として鎌倉時代から始まりました。近江商人などの働きによって全国へ広まっていったといわれています。江戸時代に入ると、琵琶湖東岸の彦根市周辺を統治していたとされる彦根藩の保護により、染色の技が磨かれていきました。地場産業として安定した産業に発展していったとされています。染める技が向上していったことによって、独特で美しい品のある絣模様になりました。
現在の近江上布には緯糸絣と経緯併用絣の2つが存在します。緯糸絣は、緯糸を羽根巻にすることで型紙捺染されるという特長があります。型紙捺染とは、模様を彫った型紙を活用して手で捺染する方法の一種です。一方で経緯併用絣は最高級品として知られ、それぞれの糸に櫛押捺染をして緯糸と経糸の絣を合わせながら織っています。1977年3月に通商産業大臣と呼ばれる現在の経済産業大臣によって、国の伝統的工芸品に認められました。
麻は通気性や吸湿性、発散性などが非常に良いので爽やかで涼しい感触を楽しむことができるでしょう。さらにとても頑丈な素材なので、婦人服や着物地、帯などを代表とする様々なものに使われています。
取扱いにはいくつかポイントがあるので注意です。麻の縮み加工製品は、手洗いをして薄く糊付けしたあとに陰干しをすることで風合いの変化を防ぐことができます。石けんを使用して袖口などの汚れを水洗いするときれいに落ちるのでおすすめです。もしも黄ばんでしまった場合はカルキに晒してください。霧を吹いてのばすだけでしわが元通りになるので麻織物はとても扱いやすいです。
製作方法は、始めに布のデザインを決定します。型紙捺染では色によって型紙をそれぞれつくるので、使う色の分の型紙が必要です。継ぎ目が目立たないように柄の配置を考慮してデザインをします。櫛押捺染では経糸と緯糸をそれぞれ模様に合わせて幅や位置を決めて予め羽定規を作っておくと便利です。
次に、型紙捺染は金枠に緯糸を巻きつけて型紙を設置し、駒ベラで染料を糸の上に置きます。型紙の継ぎ目が目立たないように染色したら、約10分間蒸し器を活用して糸を蒸して色を定着させます。一般的に使用されるのは横絣といわれる絣の柄として緯糸だけを染めたものです。その他には櫛押捺染や括り染めという方法があります。
櫛押捺染は模様に沿ってつくられた定規を参考に、竿枠に掛けられた糸に印を付けて分かりやすくし、櫛の形をした道具を用いて染色すると良いです。櫛はヒノキや真鍮を代表とするたくさんの素材があり、曲がった櫛の背面を利用することできれいに染料を塗ることができます。染色する幅や位置は柄によって違いますが、櫛の太さを使い分けることでいろいろな種類の絣糸をつくることができるのが魅力的です。糸にかかる負担が少ないので、染め上がりがくっきりするという特長があります。
染色を終えたら次は絣わけ作業です。羽巻きで巻いた緯糸はそれぞれ1本ずつにして柄を合わせるようにして再び巻いて綛の状態にします。綛になった糸を糸枠に当てて巻きなおした後に小管に巻きつけておくと良いです。経糸は絣糸と地糸のそれぞれに分別して柄を合わせます。経糸は布を織るために必要な長さと数を確保しておくことが重要です。
近江上布を織る際には高機を使います。麻糸はとても切れやすいという特性があるので、集中して作業をすることが大事です。